樋口裕一著頭がいい人、悪い人の<話し方>・<言い訳>術・<口ぐせ>(前編)
二回目の書評にもかかわらず、三冊まとめてやってしまおうというこの横着さ・・・
ですが、三冊ともいっていることは同じなので、仕方ないでしょう。
さて、この本はおろかな話し方を挙げて、それを反面教師として自分に言い聞かせたり、相手を改めて観察して、よい話し方ができるようにかかれています。<口ぐせ>では、「『できる人』に見せる口癖」も挙げられていますが、
基本的にはあの話し方は愚かだ。なぜなら・・・という書き方になっています。
賛否両論あるでしょうが、私は大いに賛成します。なぜなら、「こういった話し方をしましょう」というマニュアルっぽいことを述べられても「自分は必要ない・関係ない」と第三者的に考えてしまいがちで、なかなか聞く耳持たないと思います。しかし、筆者は愚かといわれる話し方を詳しく挙げ、それをなぜ愚かか、論理的に追い詰めています。それにより、読者に他人事のように取られないように書かれているからです。だから、退屈なマニュアル本の類とちがい「あーあるある!」「げ、私かも!」「あーあいつだ!」と楽しく読める、大変読みやすい本であります。
さて、この本が一貫していっていることは何か・・・。それは、「論理的であれ。人をなるほどと言わせる話し方をせよということに尽きると思います。」以前、私はこの記事で「頭がいいということは単に知識量をいうのではない。知識の組み合わせ方、相手にわかりやすく説明する能力、思考力、一言で言えば論理性である。」と主張しましたが、そのことと同じです。
この本で私がもっとも印象に残ったところは、<言い訳>術で「努力が足らないからだ」と努力論を押し付けることを否定しているところでした。
自分としては精一杯努力して開発した製品であっても、時代のニーズと会わなければ、売れないだろう。ニーズと合致するには、努力だけではなく、センスも必要だろうし、運も見方しなければうまくいかない。
世の中には、いかに努力しても報われない人が山ほどいる。才能、努力、運といったことがリンクしてこそ、世間で言われる成功に結びつくのだ。また、自分では努力しているつもりでも、ムダな方向に力を注いでいる人もいる。
とあります。私も以前この記事で「根拠も具体性もなく『ミンナナカヨク』ということは愚かだ」と否定しました。それと同じように、具体的にどの点を努力すればいいとアドバイスするなりしないで、ただ努力しろでは、無責任なきれいごとにすぎないのです。単に、ペシミストか、オプティミストかという違いではありません。それに、一方的に努力しろというより、うまくいかない可能性があることを示唆したほうがよっぽど人間は説得できるのです。具体的には「努力したからといって、うまくいくとは限らない。けど、それを言い訳にしてはいけない。これを精一杯やらなければ、次も精一杯できないでしょう。」といったほうが、よっぽど人間味のある、きれいごとではない説得力ある話ができるはずです。
最後に、この本は痛烈かつ、厳しい批判が多いです。だから、あとがきでも示唆していましたが、人によっては筆者が偉そうな嫌な人間に見えるかもしれません。しかし、厳しく書いたのは、より厳しく警鐘を鳴らすため、より具体性と危機感をもって読者に訴えたかったからではないでしょうか。また、この本には愚かな話し方がこれでもかと書いてありますが、そんなことあまりにも細やかに指摘していたら、会話など、ろくにできないでしょう。「その話し方が悪いことを論理的に問いただすことはできるけど、うっかりそういったいいかたをしてしまうのが人間だ」というユーモアすら感じることができます。そう、重要な場面で発せられたわけではないのなら、これらの愚かな話し方をある程度笑って軽く流すこともまた「頭がいい」ということだと思います。
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