20冊書評vol.2 大平健著「豊かさの精神病理」


ねむいわ〜。でもピッチあげていかないと。


豊かさの精神病理 (岩波新書)

豊かさの精神病理 (岩波新書)


内容
元々、人々にとって「モノ」とは人と人をつなぐ架け橋であった。一緒に食事をするということは、「同じ釜の飯を食う」という言葉からも、食べ「モノ」を媒体とした人と人の仲を紡ぐ方法であった。他にもおすそわけしかり、お土産しかり、お歳暮やお中元もまたしかりである。皆これらは、「モノ」を媒体とした人と人の交流であった。


だがしかし、現在精神科を気軽に訪れる「よろず相談」の患者の中には、従来の人と「モノ」のあり方と逆のベクトルが働いているようである。というのも、彼らは「モノ」を主人公とし、相対的に人を背景のように扱い、煩わしい人間関係を一切排除し、消毒された人間関係を送っている。かれらは、モノを主人公とすることで、不倫の後ろめたさも感じず、モノに個性ややる気を求める。そして、会話は人間っぽさが感じられず、むしろ頭の中のカタログを読み上げていくような「モノ語り」で占められる。


しかし、一見幸せに見える彼らの生活の弊害は、人間関係のいざこざにあまりにも弱すぎるということである。そう、ちょうど消毒・清潔された環境にいると、たった一つ落ちているチリ一つが大きな不安を招いてしまうように。人間の免疫も弱まってしまうように。


大抵の人間は、人間関係の悩みがあると、だれかに相談する。しかし、彼らは相談できる人がいなかったり、愚痴をこぼすという解決方法を思いつかないだろう。なぜなら、彼らの人間関係は既に消毒済みだからだ。それが、タイトルにもなっている「豊かさの精神病理」である。


この本のとても良いところは、とにかく読みやすい。本のメインは患者の相談内容とそれが解決される様子を示したものである。よって、本書の中で会話が占めるところがとても多い。活字に慣れていないにとって人はとてもオススメできる。


それでいて、筆者の主張が色濃くなく、消毒された人付き合いをする彼らを一概に「悪い」とはしていない。だからこそ、筆者に踊らされることなく、自分であれこれ考えることができる書ともいえよう。


ところで、「豊かさの精神病理」に陥っている彼らの特徴として挙げられるものは、なんといっても「モノ語り」であろう。そこで、たとえばスキーが好きな人の語りを例にとって考えてみたい。


「モノ語り」に陥ってしまうケースはやれあのスキー板がいいだのウェアがいいだのストックはどうだの、あのスキー場はどうなど、やはりカタログを読み上げるようなものである。そして、そういう話は大抵つまらないと思って他の人に聞かれているだろう(筆者はよく聞き入られたものだと、改めて感心)。なぜなら、そこで語られているものは単なる「情報」であり、そんなものは「あなた」に語ってもらう必要性はなく、そんなものはネットをすこし調べれば十だからだ。また、もっと物知りな人は「知ったかぶりしてるなー」と思って聞かれているかもしれない。


では、「モノ語り」に陥らない会話とは、スキーをやるとき、どこで失敗して、どこで成功して、どこで上達したとかいった経験談や誰かとスキー場に行った思い出などである。なぜなら、その会話にはその人らしさが嫌でもにじみ出ているからであり、そこに「モノ」だけではなく「人間」というものが存在しているからだ。そして、その内容に説得力があればあるほど、人は共感し聞き入るものである。


自分や身近な人の会話を聞いてみてどうだろうか、「モノ語り」になってはいないか。まずはそこから見つめてみたいと思う。


以下コメント返し


えろす

久々コメント㌧クス


>オタク系の人は多少自嘲的、自虐的にあるべきだと思ってるから貶されても怒りはしないなぁ


なるほど、その姿勢が取れているならエロスはオタク的にはまりつつも、とある程度距離が取れているんだね。↑のような考えはハマってしまえばしまうほどできなくなるものだかんね。


>よく知らず貶すほうも貶すほうだけど、興味ない人に無理に理解してもらおうとするほうもするほうダヨネ


貶すほうは貶すほうで「自分は正しい」「自分は異常なオタクと違って正常です」という自己正当化欲求があるだろうね。もしくは「あれだけハマるなんてバッカじゃないの」という、自分にはハマれるものがないという感情の裏返しといったコンプレックスがあるだろうね。きっと。だって、自分にとって関係なければ目くじらたてて批判したりしないモンね。


逆に理解してほしいクンは、自分の趣味を認めてほしいという自己理解の欲求というよりは、人から自分の趣味を貶されていたりして寂しいという心理もあると思うよ。


どっちもどっちといっちゃそうだけど、「なぜそういうことをするのか」という視点に立ってやっぱり心理的の深いところまで見つめて、腹を割って話してほしいモンだねぇ。聞く力が問われるから、難しいけど。