20冊書評Vol.3 山田真哉著「さおだけ屋はなぜ潰れないのか」


さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学 (光文社新書)

さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学 (光文社新書)


内容
会計はやさしくないが、本質はそれほど難しくはない。そして、もっと会計は実生活に即しているものである。しかし、会計の入門書においては、どうしても専門用語がでてきてしまう。なぜなら、いくら本人がやさしく書いているつもりでも、会計の常識から抜け切れていないからである。


よって、筆者は会計の常識からいったん離れることにしたという。そして、とことん身近な問題を扱っている。「さおだけ屋はなぜ潰れないか」もその一環である。他にも、人が全然入っていないけど潰れない店、商品を全部売って怒られた、トップを逃して満足するギャンブラーなど、「えっ」と思えることが多数でてくるが、皆会計の理にかなっている。


そして、筆者は数字によわくても数字のセンスがあれば良いという。というのも、会計で使う演算はほとんど加減乗除の四則演算である。監査も決算書すべてに目を通すわけではなく、怪しいと思ったところに目星をつけて調べる。だから、会計をやる上で、数字のセンスは必要である。




この本はとにかく易しい。中学生でも普通に読み通せるだろう。というのも、文字は大きいわ、章立てといいその中の説のタイトルが解りやすい、しかも章末には要約されたページまで存在する。これも、活字に慣れていない人でも、安心して読み通せる良書である。


だが、「こんなに易しくていいのか!」という反論もあるだろう。そう、確かに筆者自身も会計は易しくはないと本文中で述べている。しかし、文章というやつは、腰を折ったり、席をすぐはずすわけには行かない話とちがって、飽きられたらすぐ読んでくれなくなるものである。飽きられたら、難しいと思われたら書としては終わりである。そして、その読んでくれなかった人が将来会計に関わる可能性も無いとは言い切れないだろう。厳密な意味ではないが、会計用語でいえば機会損失のようなものだ。


実は、私も数学が苦手だから、経済は好きでやっていたが会計は向かないと決め付けていた。しかし、この本を読んで、「数字のセンスは結構あるじゃん」と思うことができた。そして、その後会計に興味をもって「世界一やさしい会計の本です。」を読んで、私も一般投資家レベルで決算書が読めるようになったのだ。今私自身を振り返れば、経済や株を学んでいて、決算書が読めないなんて、変な話だったなぁと思う。


<女子大生会計士の事件簿>世界一やさしい会計の本です

<女子大生会計士の事件簿>世界一やさしい会計の本です


良書は人を変える。そのことを改めて気づかされた書でもあった。